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三菱地所株式会社様 EAT&LEAD「POP UP RESTAURANT」

2024.08.04

三菱地所株式会社の食のプロジェクト「EAT&LEAD」の取り組みの一つ「POP UP RESTAURANT in 愛媛」の企画・運営全般を担当させていただきました。「食のFIELD WORK」で掘り起こした産地食材をおいしく楽しく味わっていただく、一夜限定レストラン。実際にフィールドワークに参加したシェフやパティシエが、産地の食材をプチコースに仕立てて提供しました。

Client
三菱地所株式会社 EAT&LEAD
Delivered
Planning and operation / Graphic

9月26日(火)、一夜限りのスペシャルレストラン「POP UP RESTAURANT 愛媛」がオープンしました。

メニューは、昨年11月に「食のFIELD WORK」(連記事:〈食のFIELD WORK in 愛媛〉 レポート)で愛媛県を巡った丸の内シェフズクラブら3名のシェフ・パティシエたちによるプチコースです。旅で出会った土地の食の魅力、素晴らしい生産者たちとの交流をもとに、愛媛県の食材をふんだんに生かした料理・デザートを提供しました。

また、会場を“愛媛の空気”で満たしてくださったのが、生産者の方々。シェフ・パティシエたちが訪れた松野町と西予市からお越しいただいた4名の生産者の方が登壇し、お客さまと直接会話を楽しみ、この一夜限りのレストランをより豊かで価値のある時間に変えてくれました。

そんな「POP UP RESTAURANT 愛媛」の開催レポートをお届けします。

オープン前には「ウェルカム餅つき」を実施。餅のつき手は、誰でも参加OK。つきたてのよもぎ餅に自家製あんこを包んで、松野町の皆さんがお客さま全員に振る舞いました。

18時30分を迎え、いよいよ「POP UP RESTAURANT 愛媛」がオープン。

開催のご挨拶、参加者7名の顔ぶれをご紹介した後で、シェフ・パティシエたちはキッチンへ。料理ができるまでの間に、愛媛県の生産者の方々のトークが始まりました。

当日の参加者(上の写真、左から順に)

<シェフ・パティシエ>

FARO シェフパティシエ 加藤 峰子さん
Cheval de Hyotan シェフ 川副 藍さん
PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO オーナーシェフ 岩澤 正和さん

<愛媛県・松野町>

サンクレア 細羽 雅之さん
のぶりん農園 毛利 伸彦さん

<愛媛県・西予市>

無茶々園 柑橘農家 齋藤 満天さん
無茶々園 事務局 藤森 美佳さん

司会進行は、株式会社 NINO 二宮 敏さん(西予市出身)がつとめました。

初めのご登壇者は、松野町の細羽雅之さん(サンクレア)と毛利伸彦さん(のぶりん農園)です。

初めに、松野町とはどのような町か、細羽さんからご紹介いただきました。
「高知との境目にある松野町は、愛媛県内で一番小さな自治体です。人口は3,488人。中でも、私たちは“目黒”という集落から来ました。目黒地区は人口270人、高齢化率64%の限界集落で、キャッチフレーズは『森の国』。大きな森の中心を目黒川が流れ、春には川のほとりに見事な桜が咲き誇ります」(細羽さん)

細羽さん(写真左)は、県外から松野町へ移住してきた、地域再生の担い手。目黒地区での活動はパン屋さんの開業から始まり、耕作放棄地を活用し、有機農法や合鴨農法など様々な農法を試しながらのお米づくり、オーガニック野菜の栽培、そして「森の国 水際のロッジ」の運営などを行っているといいます。

「西日本豪雨の影響で閉館となった町営のロッジを譲り受け、リノベーションした『森の国 水際のロッジ』は2020年の3月20日にオープンしました。しかし、新型コロナウイルスの直撃を受け、すぐ休館に。でも、コロナ中にゆっくりと松野町で過ごしているうちに、改めて、豊かな自然ときれいな水に満ちた素晴らしい土地だと実感しました。現在は、川の美しい水が田んぼや畑につながり、おいしいお米や野菜を育てるということを感じられる新施設『リバーサイドキャンパス』を作っています。地元食材で料理をつくり、みんなで一緒に生活するエコビレッジのような拠点です」(細羽さん)

一方、毛利さん(写真右)は、松野町のご出身。2019年まで地元の役場に勤め、退職後にお米作りを始めたそうです。「無農薬栽培に挑戦しようかと考えていた頃に、細羽さんと出会いました。細羽さんの『川上に暮らす私たちは、川下の人に責任がある。だから、きれいな川を守りたい』という熱い話に共感し、一緒にお米をつくるようになりました」(毛利さん)

松野町から「POP UP RESTAURANT 愛媛」に届けられた食材は、鹿肉(まつのジビエ)、天然鰻、よもぎ、なす、イチジク、はちみつなど。素敵な料理に仕上げ、後ほどテーブルの上へ運ばれてきます。

次にご登壇いただいたのは、西予市の齋藤満天さんと藤森 美佳さん。

まずは、司会進行の二宮さんが西予市の概要を紹介しました。
「5町村が合併した西予市は、県内で一番面積が大きい町です。海抜0mから1,400mまで、市の中に本州の気候が全部入るという多様な地形を持ち、面積の75%は山林が占めています。人口は、松野町の約10倍の3万3,443人。でも、10年前と比べると1万人以上も人口が減っています」

齋藤さん(写真左)は柑橘農家、藤森さん(写真右)は事務局メンバーとして「無茶々園」で働いています。
無茶々園は、環境破壊を伴わず、健康で安全な食べ物の生産を通じて、エコロジカルな循環型の町づくりを目指すコミュニティ。地域協同組合無茶々園して、柑橘を中心に、地域の農産物や海産物、加工品や真珠なども広く販売しているそうです。

「私たちの拠点は、西予市の明浜町。今から約50年前、若手の柑橘農家たちが農薬に頼らない“実験園”を作ったことから始まりました。きっかけは、当時みかんが全国的に過剰生産されるようになり、市場価格が暴落したこと。また、有吉佐和子さんの小説『複合汚染』にも影響され、従来型の農業のあり方に疑問を抱いたようです。そのため、現在の無茶々園にも『課題を解決するためにどうするか』という考え方が根差しています」(藤森さん)。例えば、新規就農者だけで構成されたグループをつくり、農作業をしながら学べる仕組みを整えたり、ジュースの搾汁かすから抽出したエッセンシャルオイルのコスメブランドを立ち上げたり、無茶々園は革新的な取り組みを積み重ねてきたと話します。ちなみに、藤森さんは岩手県から移住して約17年になのだとか。

「無茶々園には約60軒の柑橘農家が所属していますが、僕はその中の1軒です。無茶々園ではもともと有機農法にこだわってきましたが、近年は気候変動などの影響で、虫や病気の発生状況が昔とは大きく異なります。特に、カメムシの被害が深刻です。“有機栽培なので見た目が悪くても美味しいです”とも言えないほど、何十万匹ものカメムシの襲撃によって中身がスカスカになり、実が落ち、到底食べらる状態ではありません。そのため苦渋の選択で、最低限の農薬を使わざる得ない柑橘品種も出てきています」(齋藤さん)

1970年代から有機栽培の先駆者たちが暮らしてきた西予市より「POP UP RESTAURANT 愛媛」へ届けられた食材は、柑橘とじゃこ(無茶々園)、玄米(他力本願)、はなが牛(ゆうぼく)など。

生産者の皆さんのトークに耳を傾けた後で、愛媛の土地の恵みを堪能するディナータイムが始まりました。

「POP UP RESTAURANT 愛媛」のメニューはこちら。
<MENU>
●玄米の焼きリゾットと天然鰻・野菜出汁をかけて
●2種のピッツァ
無茶々園のじゃこのサルデッラとのぶりん畑の葉っぱのロールピッツァ
自生目黒よもぎと由良早生の希望のピッツァ
●はなが牛のロースト・無花果ソース
●まつのジビエ(鹿肉)のハンバーグと茄子のコンディマン
●日本ミツバチと花の環

乾杯ドリンクからスタートし、最後のデザートまで全5皿がコース仕立てでテーブルへ運ばれてきました。

<乾杯ドリンク> ミモザ(スパークリングワイン×無茶々園ジューシージュース)

無茶々園「ジューシージュース」は、グレープフルーツに似た爽やかな酸味とジューシーな香りを楽しめる河内晩柑ジュースです。それにスパークリングワインを掛け合わせたカクテルを提供しました。乾杯の音頭をとるのは、無茶々園の齋藤さんです。

<1品目> 玄米の焼きリゾットと天然鰻・野菜出汁をかけて

1品目は、玄米の焼きリゾット。周囲を香ばしく焼き上げたリゾットの上に、松野町の天然鰻を炭火で焼いてのせ、とろみのあるお出汁をかけています。お出汁は、ネギ、たまねぎ、大根、しいたけなど、無茶々園の約10種類の野菜を一度乾燥させてからつくった野菜スープ。お出汁が段々と染みていくと玄米の食感が変化し、またひと味違うおいしさが生み出されていきます。

この料理の担当は、シェフの川副藍さんです。
川副さんのレシピに従い、3名のシェフ・パティシエがキッチンで協力しながら料理をつくっていきました。

<2品目> 2種のピッツァ

右は「無茶々園のじゃこのサルデッラとのぶりん農園の畑の葉っぱのロールピッツァ」。サルデッラと炒めた菜っ葉を合わせたものを生地で包んでいます。サルデッラとは、イタリアの塩辛のような発酵食品のこと。今回は、麦味噌と唐辛子とじゃこを発酵させて、サルデッラをつくりました。菜っ葉は、松野町・のぶりん農園のもの。どくだみ、まびきな、小松菜、セロリ、ニラ…、炒めて美味しい菜っ葉を全部まとめて炒めています。

左は「自生目黒よもぎと由良早生と希望のピッツァ」。松野町のよもぎは、今の時期のならではの力強さを味わえるように、あえてあく抜きをしていません。よもぎ生地の間にはフレッシュチーズを挟み、はちみつや柑橘を加えています。「“希望”とつけたのは、農業ももちろんですが、酪農も応援していきたいから。日本の一次産業に希望を込めてつくりました」と岩澤さん。

こちらの担当シェフは、岩澤正和さん。
1皿ずつ料理の説明は、担当のシェフ・パティシエがそれぞれマイクを持って行いました。「よもぎは季節ごとに扱い方が異なるそうです。よもぎ餅をつくる和食の巨匠がいて、今回のために教えてもらいました」(岩澤さん)

<3品目> はなが牛のロースト・無花果ソース

メイン料理は全2皿。1皿目は、はなが牛の内もも肉をローストビーフのように低温でじっくりと火を入れた逸品です。松野町のいちじくを使ったフランス料理らしいソースをかけていただきます。

<4品目> まつのジビエ(鹿肉)のハンバーグと茄子のコンディマン

メイン料理2皿目は、鹿肉100%のハンバーグ。それに合わせるのは、松野町のなすを揚げびたしのように煮つめたもの、なすと自家製の香草バターを使ったコンフィです。

3品目と4品目に供されたメイン料理は、岩澤さんと川副さんのコラボレーションによる2皿でした。お肉料理を岩澤さんが用意し、ソースなど味わいを添えるのが川副さんの担当です。

<5品目> 日本ミツバチと花の環

デザートは、すべてのパーツを日本ミツバチのはちみつでつくった1皿。ビーガンデザートで、たとえばクリームはひよこまめの煮汁を泡立てたものです。また、日本在来の古来種の柑橘・大和橘の香りをまとわせています。

デザートの担当・パティシエの加藤峰子さんは、このようなコメントをおっしゃっていました。
「日本は人工林が多く、そこには日本ミツバチが好む在来の木の花や草花が少ないため、はちみつはとても貴重なものになっています。大和橘も、奈良時代にはすでにあった最古の柑橘ですが、今は絶滅危惧種。愛媛にはまだ日本古来の自然が残り、私はこれからも日本ミツバチのはちみつや柑橘を使っていきたいと思っています」。口の中で次々とすっと消えていく食感と柑橘香る甘い余韻、今回のデザートには生態系の儚さを表現したそうです。

食事の間には、無茶々園のお二人が柑橘ジュースの試飲スペースを用意。ジューシーフルーツジュース(河内晩柑)、ポンカンジュース、一期一会の柑橘ジュース2月(スイートスプリング×甘平)、温州みかんジュース の4種類のジュースを飲み比べしました。

昨年行った「食のFIELD WORK in 愛媛」の成果発表の場として、愛媛を巡ったシェフ・パティシエが腕を振るった「POP UP RESTAURANT 愛媛」。滋味豊かな料理揃いのプチコースに仕上がりました。

最後に、3人のシェフ・パティシエの「食のFIELD WORK in 愛媛」の感想を一言ずつご紹介します。

「食材の魅力はもちろん、個性的な人々との出会いが強く印象に残っています。また、皆さんが地域を愛してらっしゃるというのがすごく伝わってきました」(川副さん)

「愛媛にはまだ活かしきれていない食材や自然の恵みがたくさんあると思います。それらをおいしい料理に変えて、もっと愛媛の魅力を発信していきたい。また、多少のアレンジを加えたら、郷土料理にも新たな可能性が生まれそうです」(岩澤さん)

「他のシェフたちと一緒に知らない土地を巡ってみて、自分が他の方々と違う視点で物事を見ていたり、生産者の方たちの視点を直に触れられたり、とても素晴らしい経験をしました。1つのコミュニティの中で、これからは“他人の目を通じて物事を見る”ということが大切になってくると思っています」(加藤さん)

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